青い鳥がおみくじを引く――。そんな神社が千葉県東金市にある。ミニチュアの鳥居をくぐり、くちばしでつついて小さな鈴も鳴らす。「幸せを運んできてくれそう」と人気者だ。「巫女(みこ)鳥」のかわいらしい動きが、参拝者たちを笑顔にしている。
杉やイチョウの大木に囲まれた八坂神社で、青い鳥は雌のマメルリハインコ「あじさい」。宮司の中嶋祐子さん(32)と暮らしている。空色の羽根が花のアジサイに似ていることや、「神社を真心が集まる場所にしたい」という意味を込めた中嶋さんの造語「集社意(あじしゃい)」から名付けた。
中嶋さんはおみくじのために精巧なミニチュアの神社を準備した。鳥居、さい銭箱、鈴、そして扉のついた棚。すべてあじさい用で、知人の手作りだ。
あじさいにおみくじを引いてもらうと・・・
実際におみくじを引いてもらった。
「あじさい!」
中嶋さんに名前を呼ばれると、ちょこちょこと歩いて鳥居をくぐる。小さな鈴をくちばしでつついて「リンリン」。小銭に見立てた丸い木片をくちばしではさんで、さい銭箱に落とした。
さらにひょいと跳んで、おみくじの入った棚の前へ。少し開いた扉から首を突っ込み、おみくじを一つくちばしで挟む。パタパタと跳んで中嶋さんの手に乗り、おみくじを渡してくれた。
「よしよし」と声をかける中嶋さん。あじさいはご褒美のヒマワリの種をもらって満足げだ。
どのおみくじを選ぶか迷うこともあるそう。おなかがいっぱいだと成功率が下がる。次に何をしたらいいか分からなくなったようなしぐさを見せることもあるが、それもかわいらしい。
あじさいは2016年3月に中嶋さんが市内の小鳥の専門店で一目ぼれし、「家族」になった。おみくじを引くようになったのは、インターネットで同じようなことをする動画を見たのがきっかけ。
「インコは賢い。あじさいにも教えてみたい」。そう思って教え始めた。なかなか成功しなかったが、練習の成果で、3回に2度はできるようになった。
普段は家で過ごし、巫女ならぬ「巫女鳥」として時々、中嶋さんと神社にやって来る。おみくじを引くほかにも、気が向けば、「お手」や、くるりと回る芸なども参拝客に披露する。
中嶋さんは「あじさいは食いしん坊で、ヒマワリの種につられて芸事ができるようになった幸せな鳥。おみくじを引く人に、運勢の内容を問わず笑顔になってもらえたら」。インコのおみくじは不定期。1回100円。問い合わせは中嶋さんのメール(sanmu.jinja@gmail.com)へ。(高室杏子)
小鳥の芸、鎌倉時代にも
国内唯一の鳥類専門の博物館「我孫子市鳥の博物館」(千葉県)の村松和行学芸員によると、東アジア地域では小鳥に芸を教える文化があり、日本では貴族がヤマガラなどを飼育して芸を教えることがあったと鎌倉時代の書物で確認されている。江戸時代には庶民の間でも見せ物として広まった。
インコやオウムは鳥類の中でも、人間とのコミュニケーションがうまくいきやすく、学習する能力も高いことが実験で確認されているという。
八坂神社のインコがおみくじを引く動画を見て、「宮司さんが教えたことをよく覚えている。好奇心も旺盛だ」と感心していた。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル